想像の海へ ~アメリカンウォーターフロント編~
ディズニーシーは7つのテーマポートに分かれています。様々な時代背景や、細かな設定が存在します。
今回は、20世紀初頭のアメリカの街並みを基にしたエリアである、「アメリカンウォーターフロント」についてご紹介していきます!
古き良きアメリカ
現在では、「タワー・オブ・テラー」や「トイ・ストーリー・マニア!」など人気アトラクションや、ショーが行われていたりと、何かと賑わっているのが、「アメリカンウォーターフロント」です。
テーマポート別でみると、レストランや食べ歩きフード含むワゴン数、ショーの公演数がパーク内では最大です。さらに、ショップの数も2番目に多く、パークオープン後にできた新規アトラクションの数も多いです。パークでも中心となるエリアといえるでしょう。
アメリカンウォーターフロントは、20世紀初頭のアメリカの街並みを再現していて、大きく3つのエリアに分かれています。ニューヨークの街や港をイメージしたニューヨーク、アメリカ北東部の漁村と島をイメージしたケープコッド、古き良き移動遊園地をイメージしたトイビル・トロリーパークです。
アメリカの大都会・ニューヨーク
ニューヨークといえば、自由の女神やエンパイアステートビル、ブロードウェイなどを連想されると思います。アメリカを代表する大都会ですね。パークでは、約100年前のニューヨークの街並みを再現しています。時代設定は1912年だそうです。アメリカンウォーターフロントでメインになるのがこのエリアでしょう。
ニューヨークには、S.S.コロンビア号やホテル・ハイタワー、ショーが行われるウォーターフロントパークなど、様々な場所が存在します。
S.S.コロンビア号
アメリカンウォーターフロントに停泊している豪華客船です。「処女航海を控えて、ニューヨークに停泊している」という設定で、かの有名な「タイタニック号」をモデルにしています。大きさはタイタニック号の約半分ですが、建造計画の発表や建造開始、進水式実施、処女航海の行われる年が同じです。あくまでS.S.コロンビア号は設定上の話で、月日も同じではありません。ですが、細かな設定ですね。
ちなみに、S.S.コロンビア号を所有するU.S.スチームシップカンパニーは、処女航海を記念して、大統領などを招いて祝賀会を開いています。S.S.コロンビア号のそばにあるビュッフェタイプのレストラン「セイリングデイ・ブッフェ」が、その会場です。大きな貨物ターミナルと機械作業所、オフィス全てをパーティー会場へと変えたわけです。このU.S.スチームシップカンパニーの社長である、コーネリアス・エンディコット三世は、ホテル・ハイタワーのオーナーである、ハリソン・ハイタワー三世とライバル関係にありました。エンディコット家は、ホテルハイタワーの一件に関して重要になってくるので、覚えておいてください。
ホテル・ハイタワー
ハリソン・ハイタワー三世が建設したホテルです。現在は「ニューヨーク市保存協会主催」で「タワー・オブ・テラーツアー」が行われ、ホテルとしての営業は停止しています。
ハイタワー三世は探検家でもあり、世界中を巡り、文化的遺産や美術品を集めていました。それらはツアーへ参加すると、ホテルの庭や秘密の倉庫内で見ることができます。彼は大金持ちであるのをいいことに、強奪を繰り返し、コレクションの数を増やしていきました。失踪の原因となった呪いの偶像「シリキ・ウトゥンドゥ」も、コンゴ遠征の際に、ムトゥンドゥ族と呼ばれる先住民から強奪してきています。
持ち帰った偶像をニューイヤーパーティー&帰還記念パーティーでお披露目し、「呪いなどあるわけがない」と一笑します。この偶像には、いくつかの掟があり、守らなければ呪われると言い伝えられていました。
- 常に偶像を敬い、恐れるべし
- 火に近づけてはならない
- 雨や風にさらしてはならない
- 偶像を完全に覆ってはならない
- 狭い場所に置いてはならない
- 偶像を安易に手放してはならない
彼は呪いを信じていない上、掟を守らず、たばこの偶像に押し付けています。その夜、偶像の怒りに触れたハイタワー三世が乗り込んだエレベーターは落下し、彼は謎の失踪を遂げます。
彼の失踪により、ホテルを含め、彼が経営していた会社等は衰退していきます。営業ができなくなったホテルは、美しかった庭園も荒れ放題、ホテル内はクモの巣だらけで、事故当時のまま。ニューヨーク市民は「恐怖のホテル(タワー・オブ・テラー)」と、呼び始めました。前述でご紹介した、コーネリアス・エンディコット三世は、ライバルであるハイタワー三世が建てたホテルを取り壊し、自らのホテルを建てようと計画していました。しかし、娘であるベアトリス・ローズ・エンディコットが反対。1912年6月にニューヨーク市保存協会を設立し、ホテルの改修工事を行います。そして9月4日に協会主催で、ホテル内を見学するツアーを開始します。みなさんは、このツアーに参加しているということなんです。
ホテル・ハイタワーだけでも、バックグラウンドストーリーの数がかなりあります。それだけ細かい設定がされています。他の記事でまた紹介できればと思います!
ブロードウェイ・ミュージックシアター
ブロードウェイさながらのショーを鑑賞できる劇場です。現在は生演奏でジャズを楽しめる「ビック・バンド・ビート」が上演されています。劇場の外観は、実際にブロードウェイにある、ニュー・アムステルダム劇場(創設時の外観)をモデルにしています。
ウォーターフロントパーク
ニューヨーク市民の憩いの場としてつくられた公園です。スペシャルイベントの際に、ショースペースとなることもあります。ショーがない場合は、中央に水が出るスペースがあります。夏場などは、お子様の遊び場にもなっています。ここでは、ミッキー&ミニー、ドナルド&デイジーなどおなじみのキャラクターや、ビアンカ&バーナード、マリーなどのフリーグリーティングが行われます。シェリーメイのグリーティングも公園の一角で行われています。
ホレイショースクエア
S.S.コロンビア号の横にある広場です。巨大なスクリューが飾られています。クリスマス時期になると、大きなクリスマスツリーが飾られます!
広場にあるスクリューはS.S.コロンビア号を所有するU.S.スチームシップカンパニーが他に所有していたS.S.ガルガンチュア号のものとされています。前述でS.S.コロンビア号はタイタニック号をモデルにしているとご紹介しましたが、S.S.ガルガンチュア号はタイタニック号の悲劇を感じさせます。世界最大の遠洋船だったガルガンチュア号は、「1888年の冬、処女航海へと出たが、サンディーフック沖で沈没してしまった」、という設定です。タイタニック号も世界最大の客船で、処女航海での悲劇でしたね。
様々な荷物が運ばれる港
ウォーターフロントパークやホレイショースクエアのそばには、貨物船が停泊している港があります。貨物船は実際に中に入ることはできませんが、細かいところまで再現されています。そしていくつか桟橋があり、荷揚げされた木箱などが積み上げられています。その中には、みなさんもご存知の人物から送られた荷物があります。
アルコール飲料や骨付きソーセージを扱う「バーナクル・ビルズ」というワゴンのそばに、トリケラトプスの頭の化石が飾ってありますが、これはヘンリー・ジョーンズ・ジュニアからアメリカンウォーターフロントの市長宛へ送られたものです。ヘンリー・ジョーンズ・ジュニアって?と思った方もいらっしゃるでしょう。実は、かの有名な「インディ・ジョーンズ博士」の本名なんです。映画をご覧の方はピンと来たと思います。アトラクション「インディ・ジョーンズ・アドベンチャー」のジョーンズ博士です。トリケラトプスの化石を綺麗な状態で見つけてしまうのですから、さすがですね!
さらにジョーンズ博士は、ある人物にも荷物を送っています。それはマーカス・ブロディという人物です。『インディ・ジョーンズ』の映画シリーズに登場するキャラクターで、国立博物館の館長であり、大学教授や考古学者でもあります。インディとは古い仲で、彼の冒険を支援しています。映画内では1913年に国立博物館の副館長になっているので、その記念に贈ったとも考えられますね。
時代の流れ
1912年前後という時代設定ですが、この頃のニューヨークでは自動車の増加や電気の普及など、近代化が進んでいました。そのため、当時主流だった路面電車は高架上を走り、馬車の代わりに自動車が行き交うようになりました。高架上を走る電車は「ディズニーシー・エレクトリックレールウェイ」として、自動車は「ビッグシティ・ビークル」として利用することができます。では、画像の馬の金具が何かわかりますか?
この金具は「レストラン櫻」の入口あたりにあるのですが、これは馬車をひく馬を繋いでおくための金具です。どうやら実際に馬車を利用していた頃は街中に設置してあったそうです。自動車が増えてこの金具も必要なくなったので、この1カ所にのみ残っているようです。「マクダックス・デパートメントストア」のそばには、「馬車進入禁止」の標識もあります。
さらに、街路灯はガス灯が主流だったものが、電気の普及で電灯に変わってもいきました。ニューヨークエリアではほとんど電灯に変わっていますが、マクダックス・デパートメントストア付近にはまだガス灯が残っています。
故郷を見つめる探検家
メディテレーニアンハーバーからアメリカンウォーターフロントへ向かうと、ある人物の銅像が立っています。「マクダックス・デパートメントストア」の正面です。その人物とは、ヨーロッパ人としてアメリカ海域へと初めて到達した、大航海時代の探検家クリストファー・コロンブスです。
彼は「フォートレス・エクスプロレーション」を拠点とするS.E.Aのメンバーでもありますが、アメリカ海域到達の偉業を称え、アメリカンウォーターフロントに銅像が建てられています。そして銅像は、ある方向を向いているんです。
コロンブスは大航海時代、ポルトガルやスペインを転々としますが、彼が生まれ育ったのは、イタリアのジェノヴァです。当時は海洋国家として栄え、現在でもイタリアで最大の貿易港です。そして銅像は、生まれ育ったイタリアをイメージしたメディテレーニアンハーバーを向くように建てられています。どんなに色んな場所へと冒険していても、生まれ育った場所は恋しくなってしまうものなんですね。
ザンビーニ3兄弟
メディテレーニアンハーバー編でもご紹介していますが、「ザンビーニブラザーズ・リストランテ」を経営する、ザンビーニ3兄弟の肖像画をアメリカンウォーターフロントで見ることができます。
「ニューヨーク・デリ」のテラス席側の壁に描いてあります。メディテレーニアンハーバーからアメリカンウォーターフロントに入った側です。「ヴェネツィアン・オリーブオイル(VENETIAN OLIVE OIL)」という文字もありますね。ニューヨーク・デリのメニューに、このオリーブオイルが使われているのかもしれませんね!
アメリカの田舎町
ダッフィーのふるさとであり、マサチューセッツ州にある同名の漁村「ケープコッド」と、ナンタケット島がモデルになっているエリアです。あまり広くはありませんが、スペシャルイベント中はダッフィーモチーフのデコレーションがされるなど、ダッフィー色が強いエリアです。モデルとなったケープコッドは、温暖な気候で浜辺を中心に観光地として賑わっています。ナンタケット島は有名な観光地で、映画や小説などの舞台にもなっています。
タウンホールで料理大会
中央あたりにある白い建物は、ナンタケット島にある教会をモチーフにしていて、ケープコッドのタウンホールです。ここはレストラン「ケープコッド・クックオフ」の入口部分になっていて、村で行われている伝統的な料理大会の会場であるという設定です。店名にある「クックオフ」が料理大会の名前で、1等になると「ブルーリボン賞」がもらえます。このブルーリボン賞を受賞したメニューは、時期によっては別のイベントのスペシャルメニューに変わっていることもありまが、レストランで楽しむことができます。
このレストラン、タウンホールを中心に左右に分かれています。それぞれ、飲食をするだけのスペースと、ショーを鑑賞しながら食事ができるスペースです。飲食をするだけのスペースは、消防署という設定です。一方で、ショーを鑑賞しながら食事ができるエリアは、広さが必要だったので造船所を改造してあるそうです。なお、現在鑑賞できるショーは「マイ・フレンド・ダッフィー」です。2部構成で、ダッフィーとミッキーの旅立ちのお話と、シェリーメイ誕生のお話が楽しめます。時間制のうえ、空いた席に通されるのでどこで鑑賞できるかはその時のお楽しみです。
舵輪を持つ漁師の像
タウンホールの正面に、ちょっとしたフォトスポットがあります。舵輪を握るミッキーの像です。クリスマスや春のイベントではデコレーションがされ、記念撮影をするゲストさんが多いです。実はこの像には、モデルとなった像があります。
モデルとなった像があるのは、ケープコッドと同じく、マサチューセッツ州の北東部にあるグロスターという漁業が盛んな都市です。観光地でもあるこの地には、港のそばに「舵を執る男の像(Man at the Wheel, Fisherman’s Memorial)」が建てられています。
ちなみに、絵本作家バージニア・リー・バートンが、グロスターの海辺にある村フォリー・コーヴに移り住んでいます。彼の代表作である「ちいさいおうち」は、この村の伝統的な家がモデルだといわれています。この「ちいさいおうち」は、後にディズニーが短編映画として制作しています。これは単なる偶然なのでしょうか?
村人を見守る灯台
ケープコッドからポートディスカバリーへ向かう途中に、赤と白の灯台があります。ケープコッドはハリケーンなど、悪天候に見舞われることが多く、漁に出た船を見守る、「ハリケーンポイント・ライトハウス」と名付けられました。この灯台は、1909年7月の独立記念日
に、「自由の娘たち(The daughters of Liberty)」という団体から寄贈されたものです。この団体には、独立戦争で戦った者たちの直系の子孫、かつ女性だけが入団できる婦人団体です。
<ハリケーンポイント・ライトハウス.JPG>
少し歴史の話になるのですが、実際のケープコッドを含め、周辺の街はアメリカ建国のきっかけに深く関わっています。そのため、パーク内のケープコッドにも、独立戦争に関する再現がされています。灯台の他に、「アーント・ペグズ・ヴィレッジストア」のそばに大砲が飾られていますが、こちらは独立戦争時に使用された大砲ということです。こちらも「自由の娘たち」から寄贈され、戦争で犠牲になった人々を追悼する意味と、独立戦争というものを後世に伝えるために飾られているそうです。
ケープコッドから見るプロメテウス火山
ケープコッドエリアからもプロメテウス火山が見えますが、実は火山ではないのです。どういうことかというと、モデルになったケープコッドには、活火山がなく、見られるのも花崗岩(白っぽい岩)くらいだそうです。プロメテウス火山はシーのほぼ中央に位置しているので、どのテーマポートからも見えることになります。火山のないはずのケープコッドから火山が見えるわけにはいかないので、ある工夫がされています。
ケープコッドから見た山は、白いごつごつとした岩山に見えるようにされています。画像はトランジット・スチーマーラインに乗り、ケープコッドからポートディスカバリーへ差し掛かったところですが、山の右側には気が生い茂り、ごつごつとしているのがわかります。
さらに、ケープコッドにいる間は、極力噴火の時の音が聞こえないようにされています。言われるまで気付かないようなことですが、とてつもないこだわりを感じますね。
おもちゃの世界
2012年にオープンし未だに2時間待ちは当たり前である、「トイ・ストーリー・マニア!」。このアトラクションのオープンと共に出現したのが、「トイビル・トロリーパーク」です。トイビル・トロリー・カンパニーが開設した公園で、移動遊園地をモチーフにしています。かなり小さなエリアですが、大きなウッディが出迎えてくれる他、レックスやブルズアイなど、トイ・ストーリー好きにはたまらないエリアです。
トイストーリー・マニア!の他に、ちょっとした遊べるコーナーもあります。その場で足踏みをする、「ブレイジン・バッカルー」や「ウッディのワンダーワゴン」、ミスター・ポテトヘッドが登場する「トイボックス・プレイハウス」など、アトラクション以外でも楽しめるようになっています。
トイビル・トロリー
アメリカンウォーターフロント内の線路を辿っていくと、トイビル・トロリーパークへと続いている線路があります。アメリカンウォーターフロント内を走っていた路面電車は、「トイビル・トロリー」と呼ばれ、トイビル・トロリーパークは路面電車の終着点でもあるんです。エリア内にトイビル・トロリーの絵があります。どこかディズニーランドの「ジョリー・トロリー」に似ているような気がします。是非探してみてください!
最後に
いかがでしたか?ディズニーリゾートでは「古き良きアメリカ」がというキーワードが多く登場します。アメリカンウォーターフロントはおよそ100年前の時代設定なので、まるでタイムスリップしたような体験ができるというわけですね。移動中でもいいので、ちょっとした看板やプロップスなどに注目してみてください!
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